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9  街道と、宿場町を辿って、十日。  王都が近づき、道はだんだんにぎわってくる。  そして。 「あれがそうだよ、ノア王子」  ・・・見たこともないような、建築物。  ローランディアの父上の、実用一点張りの武骨な辺境の城とは違う。  ダーラムシアの王都ダーラムは、森と湖に恵まれた高原地帯に大きく広がっていた。  こけら葺きと瓦屋根が半々くらいの、市街。  森と林をうまく挟み込み、ゆったりと立てられた、瀟洒な大きな建物。  大小の船が浮かぶ大きな湖に張り出したように、連なるいくつもの建物。  その一番奥にあるのが、ノアの父、アレクサス・モント・ダーラム三世の王宮だった。  市街に入る門の所で鑑札を見せると、サラとジョゼはノアを連れて、にぎやかな市街の大通りをぬけ、湖に接する建物の一つに向かった。  門番にサラが何か言い、彫刻を施した鉄の門が開く。  小馬から降りたノアを、執事らしい年寄りが迎えた。 「よくお戻りになられました。ノア王子」 「じゃ、あたしたちはここまでだ。元気でね。王子様」  ノアがあわてて振り向くと、ノアが乗っていた小馬を引いて、二人はさっさと門の方へ行ってしまう。 「あ。ありがとう、サラ!ジョゼ!」  ノアが叫ぶと、サラは振り向きもせず手を振り、出ていく。  叫んだノアを、年寄りはじろりとにらむ。 「大声を出されるのは、はしたのうございますぞ」  ノアがびくりとすると、年よりは優雅なしぐさで玄関に向かってノアを促す。 「こちらへどうぞ、ノア王子。  ご親族のポルターク伯爵がお待ちでございます」
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