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街道と、宿場町を辿って、十日。
王都が近づき、道はだんだんにぎわってくる。
そして。
「あれがそうだよ、ノア王子」
・・・見たこともないような、建築物。
ローランディアの父上の、実用一点張りの武骨な辺境の城とは違う。
ダーラムシアの王都ダーラムは、森と湖に恵まれた高原地帯に大きく広がっていた。
こけら葺きと瓦屋根が半々くらいの、市街。
森と林をうまく挟み込み、ゆったりと立てられた、瀟洒な大きな建物。
大小の船が浮かぶ大きな湖に張り出したように、連なるいくつもの建物。
その一番奥にあるのが、ノアの父、アレクサス・モント・ダーラム三世の王宮だった。
市街に入る門の所で鑑札を見せると、サラとジョゼはノアを連れて、にぎやかな市街の大通りをぬけ、湖に接する建物の一つに向かった。
門番にサラが何か言い、彫刻を施した鉄の門が開く。
小馬から降りたノアを、執事らしい年寄りが迎えた。
「よくお戻りになられました。ノア王子」
「じゃ、あたしたちはここまでだ。元気でね。王子様」
ノアがあわてて振り向くと、ノアが乗っていた小馬を引いて、二人はさっさと門の方へ行ってしまう。
「あ。ありがとう、サラ!ジョゼ!」
ノアが叫ぶと、サラは振り向きもせず手を振り、出ていく。
叫んだノアを、年寄りはじろりとにらむ。
「大声を出されるのは、はしたのうございますぞ」
ノアがびくりとすると、年よりは優雅なしぐさで玄関に向かってノアを促す。
「こちらへどうぞ、ノア王子。
ご親族のポルターク伯爵がお待ちでございます」
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