プロローグ

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「おお、おお、召喚は成功じゃ!  見よ!この素晴らしき獣を!  これこそ我に相応しき最強の従魔なるぞ!」  壇上で、黒い短刀を振り回しながら年取った雄が叫んだ。  しなびた小さい人族の雄。  魔導士か。  その魔力に拘束された数頭の人族が、前に佇んでいる。  屠ったばかりの、未成熟の雄の子の死体が魔導師の足元に崩れ落ちる。 『従魔だと?』  この俺様を従属させようなどと、愚か者めがっ!  獣は怒りの咆哮を上げる。  どん!と、獣の闘気の波動が、結界にぶち当たり、持ちこたえた結界が軋み、辺りを揺るがす。  胡座の雄たちが怯み、詠唱が乱れる。 「ええい、臆病者めら。怯むな!結界を維持しろ!」  叫んだ魔導士は、次の生贄を掴んだ。  薄紫の長い毛を乱した、紫の眼を持つ若い雌が、獣に顔を向ける。  悲しみでいっぱいの紫の瞳が、獣をひたと見つめる。  声にならぬ、嘆願。  魔導士の振り上げた黒い刃の石の短刀が、雌の胸に深く突き立つ。  短刀が雌の魔力を吸い上げて、魔導士の身体に流し込むのがわかる。  獣を見つめたまま、苦しげに喘ぐ雌の瞳から、命の灯が消えていく。  魔導師が新たに唱え始めた言の葉と共に、力を増した鎖がぎりぎりと獣を締め付ける。 「諦めよ!我に従え!」 『だ・・・れが・・・命令なんか・・・きくかよ・・・』  拘束の鎖を物ともせず、獣は身を起こそうとする。  皮膚を破り、肉に喰い込む鎖。  吹き出す血潮に魔導師があわてて声をあげる。 「やめろ、無茶をするな、その見事な体に傷がつくっ!」 『大きな・・・お世話だ・・・ぜっ!』
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