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「は・・・はは・・・」
拘束された生贄の一人、白い毛の老いた雄がしわがれた声で笑う。
「これはまた、ずいぶんと格上の獣を召喚したものだ。
そなたにこれを従えるだけの器量がある・か・・・の・・・」
「黙れ!黙れっ!」
魔導師が雄に指をつきつける。
首輪が締まり、ぐうっと喉を詰まらせ、笑い声が途切れる。
「老師!」
窒息しかけて倒れかかる雄を黒い毛の若い雄が支える。
少し年かさの銀の毛の雄が、二人をかばうように立つ。
三人とも、強力な魔力の持ち主とわかる。
魔導師が屠るために用意した、魔力の源となる生贄か。
抵抗できぬように魔道具の首輪で拘束されているが、ある程度の自由意思は残されているようだ。
「・・・獣よ・・・我に・・・従え・・・」
魔導師が脂汗を流しながら命じる。
これ以上締め付ければ、獣の肉体に大きな損傷を与えてしまう。
しかし、獣は抵抗を止めず、その意志は巌のように固い。
『俺を使いたいのなら、死体にして使いやがれ!
命尽きるまで抗ってやる!』
・・・こんな・・・はずでは・・・
賢者め、儂の集中を乱すために余計なことを言いおって・・・
けだもののほうが、儂より格が上だと?
こんなけだものよりも、儂の意志の方がはるかに強いはずだ!
獣が再び咆哮する。
結界にぶつかる純粋な闘気の塊。
手下たちが震えあがる。結界が揺れる。
力が拮抗している隙を見て、銀の雄が二人に囁いた。
獣を閉じ込めるこの結界は一方通行。
中の力は一切通さないが、外から入ることは出来ると。
獣が弱ったら拘束するため、魔道具を持った部下たちが近づく手はずになっているためだ。
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