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3  やっとはっきり目が見えるようになってきた。  ともすれば立っているだけで開いていってしまって、使いにくかった四本の足もしっかり踏みしめられるようになり、頭にくっついていた耳も少し立ち上がって物音を拾いやすくなる。  俺たちが住んでいるところは犬舎というところで、ほかにたくさんの仲間の声が聞こえる。  母と俺は特別に、人族の従者つきで一部屋を与えられている。  うん、母は偉いのだな。  しかし部屋の中は狭くて何もない。  つまらん。  入り口の仕切りを越えようとするが、いつも母に見つかって、首筋を咥えられ、引き戻されるばかり。  うん。母は好きだし、うまい乳をくれるし、甘い匂いであったかくて。  でも、俺、退屈なんだよーっ。  いつもは三、四匹の兄弟だって人族が言ってたじゃないか。  遊び相手とか、けんか相手とか、負かす相手とか、負かす相手とか、負かす相手とか、いなきゃつまんないんだよーっ!  というわけで、今日も俺は仕切りに挑戦するのだ。  足をかけてよじ登ろうとするが、前足はかかっても後足がついて行かない。  宙ぶらりんでじたばたする羽目になる。  うまい事に、母はちょっと場を外した。この隙だ。  必死によじ登り、上でグラグラすると、頭が重すぎて真っ逆さまに落ちた。  『ぐう☆!』  やった、成功!  と思ったら、俺を抱き上げた奴がいる。 『おい、必死で越えたんだぞ、邪魔するな!』 「悪いなラス、この子をちょっと借りるぞ」 (そう、母はラスというんだ)  と言うと少年は(顔は見えないけど、この匂いは奴だ)俺を抱いたまま速足で歩き出した。
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