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今となっては、どれほどの距離を歩かされていたのか思い出せない。十分とも、三十分とも、はたまた一時間の距離だったかもしれないが、祖母について行くのに必死で、最後まで道順を覚えることはできなかった。 街から離れた場所に来て、しだいに街灯もまばらになっていく。街灯を飛び石のように辿っていくうちに、もう先には一つも灯りがない場所へと来る。気味が悪い、街灯より外の暗闇は深く、一歩でも踏み出せば地獄の大穴に落下せしめたらんとする漆黒が広がるのみ。 祖母は最後の街頭の下で立ち止まると、満月の浮かんでいる方角へと目を凝らした。すると、そこに小さな蛍の灯りかと見紛うほどの、点灯を発見する。祖母は躊躇なく、針の穴ほどの灯りを頼りに、暗闇を突き進んだ。コンクリートの硬さに疲弊していた草履が、しだいに草むらを踏む。周囲には風が舞い、頭上で笹が擦れ合って鳴き声を上げる。街中を歩いていた私たちは、気付けば竹林を歩いているのだ。いつからなど知れない。区切られていた部屋と部屋を通り抜けたように一瞬にして、私たちは竹林に迷い込んでいるのだ。 竹林には蛇がのたうったような、くねくねした道があり、それを辿っていく。道の終着点では、いつも安堵のため息が漏れた。     
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