エピローグ

4/4
前へ
/204ページ
次へ
「ゆき・・・?」 物問いたげに見上げてくる瞳が、蛍の光を映して碧く揺らめく。 頤を掬い上げ、そっと唇を重ねる。 「んっ……」 視界の隅に、また蛍の光が・・・。 「こら・・どけよ。」 龍の肩にとまった蛍をそっと手で払う。 「んふふっ、変なの。   蛍と話してるの?」 「ああ。 ちゃんと俺のだって教えてるんだ。」 「じゃあ・・・  ゆきのだって印、つけて。」 「・・・仰せのままに。」 そのまま唇をずらし、紅い花を咲かせてゆく。 「っ……ぁ…はぅ……」 沢全体に満ちた光が、 まるで龍の感覚に連動しているかのように激しくまたたく。 「はぁっ、ゆ…き…ぁっん…っやぁ……んっぅ」 喘ぎを飲み込むように、深く口づける。 やがて・・・ 光の明滅に同調するかのような律動とともに さらに高みを目指す。 「っ!……ぁあっ!!」 龍がひときわ高く啼いて、天を仰いだ瞬間。 ぽぁ・・・・・・・・ 光が一斉に舞い上がる。 あっ・・・ 熱を放たぬはずの蛍の光が、夜の冷気を追い払う。 まるですべてに祝福されているかのように、暖かな気が満ちる。 この島の自然と祖先の霊に守られ、大切に育まれてきた宝物。 「俺がもらってもいいか?   一生、大事にするから・・・。」 瞳を上げて誓う。 「んふっ、今度は誰と話してるの?」 「今までお前を育んできたもの全てに。」 蛍の光は天空へ天空へと・・・。 やがて星のまたたきと同化して、夜空を満たしていった。                                     ≪完≫
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加