島流し

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ほぼ三昼夜船に揺られてやっと目的の島に着いた。 ふらつく足で、久しぶりの陸地を踏みしめる。 青い海とどこまでも続く砂浜。 背後にはこんもりと小高い山も見え、 とんびが数羽、上昇気流に乗って優雅に飛んでいる。 暖かく湿り気を帯びた風が頬に心地よい。 「ふ~、こんなのどかな風景もあるのだな。」 しかしこれからここで残りの人生を過ごすのかと思うと、 一気に気がめいる。 水主達が積荷を次々と浜へ降ろしていく。 流刑人が持ち込める物として、米二十俵と金二十両を許されていた。 当座の食料には困らないが、ここでずっと暮らすとなると 住居やら生活手段を考えなくてはならない。 しかももうすぐ日も暮れる。 さてどうしたものか、と思案していると、   「結城様ですか?」 老人に声をかけられた。 後ろに、若い男を二人伴っている。 「そうですが・・・。」   「菊池様からお話を伺っております。    お世話をさせていただきます仁兵衛と申します。」 「菊池から?」   「はい。どうぞこちらへ。    荷は運ばせますので。」 いぶかりながらも後について行く。
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