島流し

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  「お若いので驚きました。」 「そうですか?」 結城は二十七になったばかり。 大きな瞳とふっくらとした唇が、年齢よりも若く見せていた。   「こちらでございます。」 浜から小道を辿った高台にある小屋へと案内される。 かなり古いが手入れは行き届いており、中もきれいに片付いている。 「ここは?」   「お住まいとしてお使いください。    村の中の方が何かと便利かとは思いますが、    なにせこのような辺境の民ですので、失礼があってはと思い・・。」 罪人とは接したくないと言うことだな。 「そのようなお心遣いは無用に願います。  ですが、ここは気に入りました。  お言葉に甘えて住まわせていただく事にします。」   「そうですか。」 明らかに安堵した表情。   「食料はこちらまで届けさせますので。」 「そこまでしていただくのは・。」   「いえ、不自由のないようにと申しつかっております。」 「そうですか。 ではこれで。」 懐からいくばくかの金を取り出す。   「いえいえ、もう菊池様から十分に頂いておりますので。」 「えっ? 菊池から?」 さすがだな。 菊池の行き届いた配慮に驚くとともに、感謝する。 自分一人では住むところを探すのも難儀したことだろう。 小屋は一人で住むには十分な広さで 最低限の家財道具も備えられていた。 が、今まで住んでいた住居とは比べ物にならないくらいみすぼらしい。 その日は、慣れない寝床にまんじりともしない夜を過ごした。
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