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バイトも終わり辺りが暗くなった頃、俺はバスに乗った。
5分くらいしたところで俺の座っている横に人が立った。
背中の曲がった小さな爺さんだ。
軽くあたりを見回すと席はちょうど埋まっているようだった。
「くそ、何でよりによって俺んとこで立ってんだよ」軽く舌打ちしたところで俺の座っている場所が優先席だったことに気付いた。
「爺さんだからって譲ってもらえると思うなよ」心のなかでそう呟いたところで気まずさもあって寝たフリをすることにした。
しばらくして目的地に着き降りようと目を開けると爺さんはまだ俺の横に立っていた。
肘で爺さんを避けるように椅子から立ち上がりバスを降りた。
バスから降りて10分くらい歩けば家に着く。
途中街灯はあるものの人通りの少ない道を通るがいつもは何も気にしない。
しかし今日は何か違った。
ぞわっとした胸騒ぎがして後ろを振り返った。
すると人がいた。街灯が照らしたのはさっきの爺さんだった。ふいに見覚えのある顔に出くわしたことで一瞬飛び上がりそうになったが何食わぬ顔してそのまま向き直り歩きだそうとすると
「どこか体の具合が悪いのですか?」
と声を掛けられた。
誰に言っているのかわからなかったが周りには俺しかいない。
戸惑っているともう一度
「どこか体の具合が悪いのですか?」
と聞こえた。
足を止め振り返り、
「は?俺に言ってんの?」と聞いた。
…つもりだった。
振り返った瞬間俺は地面に倒れていた。
頭を何かどっしり硬いもので殴られたのだ。
必死で起き上がろうとするがなかなか起き上がることができない。
倒れている俺を爺さんが覗きこんできた。
「いえ、さっき優先席に座っていらっしゃったから…どこか体の具合が悪いのですか?」
宝くじでも当たったような満面の笑みだった。
「どこも悪くねぇよ!ふざけんなよ!こんなことしやがってぶっ殺してやるからな!」
そう捲し立てたつもりだったが思うように声が出せなかった。
ゴッという鈍い音と同時に脛に凄まじい電流が走った。
「ぐがぁぁぁ!!」勝手に声が出た。
爺さんを見上げるともう一撃食らわせようと金槌を振りかざすところだった。
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