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惑星スノードーム
「いらっしゃいませー」
くぐもった声に被さるように、ドアベルから繊細な氷の結晶のような音が鳴り響く。
朝の薄明を背に店に入ってきた一人の青年は、ドアを後ろ手に閉めると、黒いコートの肩にかかった白い雪をそっと手で払った。
「こんばんは」
青年は、大声を出すとこの狭い店内に並べられているワレモノの商品が壊れてしまうと思っているかのように、静かな声で店の奥に声をかける。
ーー返事はない。
彼は苦笑すると、黙ってコートを脱いでポールハンガーに掛け、木でできた床の上に足を踏み入れた。
柔らかな光に包まれた店内。
竹ひごで作られたように見える楕円の軌道の上を、大人の握りこぶしより少し大きい硝子玉が、ゆっくりと移動している。
軌道は糸で天井から吊られたものもあれば、床から伸びた長い棒に支えられているものもある。
軌道は立体的に入り組んで店の中を走行していて、これで硝子玉同士がぶつからないのが不思議に思えるほどだ。
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