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「またのお越しをお待ちしております……」
パタン……
と音を立て、青年の背後で扉が閉まる。
外に出た途端に寒い風が吹く。青年は慌ててコートのボタンをかけた。
いつの間にか、雪は止んでいる。
「やっぱり、『あちら』とは時間の進み方が違うんだな……」
彼は小さく呟き、夕闇に沈んだ街並みを見渡した。
店に入る前と全く変わらない景色。しかし、店の中にいる間に、太陽は空を横切って地平線に消えてしまったようであった。
立ち並ぶ屋根の上には星が瞬き始めている。
彼は天を仰ぎ、夜空の向こうに硝子のドームを思い描いた。
ほう……と吐いたため息が、一瞬白く煙って消える。
「……まさか、自分が既に惑星ステイ中だったとはな……」
苦笑して言った。
ステイを中断すると残った期間の料金は返してもらえないと聞き、彼は別の惑星へのステイの切り替えは断念することにしたのである。
しかし、これは自分にとって何回目の惑星ステイなのだろう……。
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