惑星スノードーム

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一面の森……。 「……『樹海の惑星(ほし)』……ですか」 青年が囁くように尋ねた。 「ええ。自然を愛する方々が、今も二百五十七人、この中で自給自足の生活を営んでおられます」 「ほんとだ……」 青年は虫眼鏡のレンズの横についた小さなつまみを回す。倍率がぐんぐん上がって、森の中の小さな草地、その中にある集落、家のそばの畑、そこで種をまいている人たちの姿が次々にレンズの上に浮かび上がってきた。 青年が微笑む。 「……なかなか楽しそうですね」 「ええ。リピーターも多く、滞在期間も長めに設定されるお客様が沢山いらっしゃいます。 それに合わせて、こちらの惑星(ほし)の体感時間は十七倍と、普通の商品よりも長めになっております」 「ああ……。確かに、この惑星(ほし)の自転速度は他のものよりも早く見えますね」 こちらでの一日が、この中では十七日ということである。
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