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一人うんうんと頷くクリアの元に、トウガが駆け戻ってくる。階段を勢い良く降りてきた彼は、両手に色とりどりの袋をたくさん抱えていた。この家では、各自が買い物をしたときの袋や、頂き物をしたときの袋を、たいてい綺麗に畳んで取ってある。それらは例えば、こんなときに役に立っていた。
しかし、トウガは明らかに四つ以上の袋を携えている。タツキの視線を感じたらしいトウガが、先手を打って胸を反らす。
「ほら! おかあさんのお友だちにも、分けてあげられるかもしれないでしょ」
「あら」
「だから、ふくろはいっぱいあったほうがいいのかなって思ったの! あとほら、お兄ちゃん! レオンお兄ちゃんにも」
トウガの言う『お兄ちゃん』とは、クリアの実弟レオンのことである。彼の本名はケイオスというが、世間では『レオン』で通っているので、トウガも日頃はそう呼んでいる。
久方ぶりに義弟兼親友の名を聞き、タツキが腕組みをする。
「レオンかあ。最近顔見てねえな。元気?」
「連絡はちょくちょく取ってるわよ。文通してるから。ただ、最近はちょっと返事が遅いわね。仕事が忙しいのかもね」
筆まめな子なのにねえ、とクリアも首を傾げてみせた。
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