風の隊長、日々を行く

17/17
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/783ページ
 一人うんうんと頷くクリアの元に、トウガが駆け戻ってくる。階段を勢い良く降りてきた彼は、両手に色とりどりの袋をたくさん抱えていた。この家では、各自が買い物をしたときの袋や、頂き物をしたときの袋を、たいてい綺麗に畳んで取ってある。それらは例えば、こんなときに役に立っていた。  しかし、トウガは明らかに四つ以上の袋を携えている。タツキの視線を感じたらしいトウガが、先手を打って胸を反らす。 「ほら! おかあさんのお友だちにも、分けてあげられるかもしれないでしょ」 「あら」 「だから、ふくろはいっぱいあったほうがいいのかなって思ったの! あとほら、お兄ちゃん! レオンお兄ちゃんにも」  トウガの言う『お兄ちゃん』とは、クリアの実弟レオンのことである。彼の本名はケイオスというが、世間では『レオン』で通っているので、トウガも日頃はそう呼んでいる。  久方ぶりに義弟兼親友の名を聞き、タツキが腕組みをする。 「レオンかあ。最近顔見てねえな。元気?」 「連絡はちょくちょく取ってるわよ。文通してるから。ただ、最近はちょっと返事が遅いわね。仕事が忙しいのかもね」  筆まめな子なのにねえ、とクリアも首を傾げてみせた。
/783ページ

最初のコメントを投稿しよう!