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「あーにき」
一番隊室の机に座り、書面を前に頬杖をついていたタツキは、後ろから不意に肩をとんと押された。振り返ると、副隊長のバートが片手に雑誌、片手に茶を携えて、ニコニコとこちらを見ている。体勢から察するに、彼は雑誌を携えた方の肘でこちらの肩を押したらしい。
「どうしちゃったのさ、朝からずーっと小難しい顔して。らしくないんじゃない。とりあえずなんか飲みなよ」
とん、と目の前に茶の入ったカップが置かれる。ふわりと柑橘系の甘い湯気が立ち込めた。察するに、どうやらアールグレイのミルクティー。最近、淹れ方をフローラちゃんから教わったんだ、とバートが笑う。
タツキは、カップを片手で取ってしげしげと眺めた。
「……フローラちゃんなら絵になったのになあ」
「ひどくねー? 万年秘書やらせといて未だそれはひどくねー?」
「しゃあねえなあ。フローラちゃんもガキ共も出払ってるし。オレらはいつだっけ、出るの」
「残念ながら昼過ぎです。まだ相当あります。だから今のうちに雑務諸々片付けちゃおうぜって振ってきたの兄貴じゃーん!」
タツキは答えず、涼しい顔で茶を飲む(もちろん、彼の脳内ではフローラが淹れたことになっている)。
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