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同じ頃部活で色々あり自分の道を見失っていた僕にとって、日野さんがこうして笑ったり時にはむくれたりする姿を見られる様になったきっかけである一件に関われた事は、彼女だけでなく僕自身も見失った道を見つけ出すために重要な事だったと思っている。
彼女は家の爺ちゃんと婆ちゃん――朝霧宗一郎・洋子夫妻から大変気に入られていて、夏の一件以降は孫同然と言うか、朝霧家の現状に於いて実孫の僕よりも明らかに待遇がいい。
日野さんもまた一人親である父親が月の半分以上仕事で家を空ける生活を何年も送って来た中で我が家にしばらく滞在した事等もあり、家の爺ちゃんと婆ちゃんにはとても懐いているようだった。
そんな経緯もあって、今日はまた婆ちゃんに料理を習うと言う日野さんと一緒に我が家へ向かっているのである。
不意に日野さんのスマホから猫の鳴き声の通知音が鳴る。
「……洋子さんからだ」
「何て?」
「町会の集まりで七時くらいまで宗一郎さんと出かけてきます……って」
「……何で僕じゃなくて日野さんに送るんだ」
もう半ばどころではない、完全に僕よりも家族扱いである。
「朝霧君」
スマホをしまいつつ日野さんがこちらを見る。
「洋子さん達が帰って来る時間まで大分あるし、コーヒー飲みに行こう」
「コーヒー? 圭一さんの店?」
「うん」
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