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日野さんが言っているのは北鵜野森商店街にある喫茶店『アイレン』の事で、家の爺ちゃん婆ちゃんよりも少し年上の友人である宵道圭一さんと言うマスターが経営している店の事だ。
ずっと昔からある喫茶店で、煉瓦造りの外装が目を引く個人経営の店舗である。
元々婆ちゃんのお気に入りの店だったのだけれど、日野さんも何度か婆ちゃんに連れられて通っている内に常連になりつつあるらしい。
僕はどうにも味覚がまだ大人ではないらしくコーヒーの素晴らしさを理解するまでに至っていないのだけれど、それらを幸せそうに味わってコロコロと表情を変える日野さんを見ているのが楽しいので最近は割と顔を出す様になっていた。
「そうだね。なら寄って行こうか」
「うん」
僕らは晩までの時間調整も兼ねて、アイレンへ入る事にしたのである。
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