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店に入ると、ドアに付けられたアナログの鐘がからんと鳴る。
少し冷えた風に晒されて来た僕らは、店の温かい空気にほっと安堵の息を漏らした。
「や。いらっしゃい」
カウンターで新聞をを読んでいた痩身で白髪の男性がこちらを見て微笑んだ。
「こんにちは圭一さん」
「こんにちは」
僕らは圭一さんに挨拶をして、カウンター席へ腰を下ろす。
「ん? 御覧の通りボックス席も空いてるけど、カウンターでいいのかい?」
「ああ、いいんですいいんです」
「コーヒー淹れてる所、見たいので」
「ハハ、これは照れるネ」
苦笑して水とおしぼりを出してくれる。
「で、今日は何にするんだい?」
「……お任せします」
「僕も」
「はいヨ」
そう返事をして、圭一さんは何種類かの豆を取り出した。
店内に流れるJAZZの音色に包まれて目の前でコーヒーを淹れている光景を眺めているだけで、いつもよりちょっと大人びた気分になるのだから我ながら単純なものだ。
「あ……“テイク・ファイブ”」
「お、ご名答。デイヴ・ブルーベックの名盤だね。凄いな、若いのに覚えてきたのかい」
「ここに来るようになってから、色々」
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