783人が本棚に入れています
本棚に追加
「けど、お前はそうした。俺を想って、春奈の一件で、身を引こうとしたんだろ?」
「それは…そうだけど」
それを言われて、何も言えなくなってしまった。
「お前に告られて、直ぐに答えなかったのは、お前が大切だからだ。大切な分、慎重になるし、深くも考える」
これは………。
これは、夢だろうか?
「悩みに悩みまくって答え出して、いざ返事をしようとしたら、馬鹿ザルは消えちまってるし、追いかけて来たら来たで、逃げ出しやがるし……ほんと、振り回されてばかりだ、お前に」
「なんだよ、それ…振り回されてんのは、俺の方だし」
月山薫から、信じられない言葉ばかり聞かされる。
「答え……出たんだろ?あんたの答え、聞かせろよ」
言いながら、ぎゅっと自身の掌を握る。
緊張の汗で、掌はベタベタだった。
「お前、覚悟あるか?」
逆に質問されて、真意を探るように月山薫の目を、ジッと見つめる。
「覚悟?」
聞き返した俺に、月山薫は静かに頷いた。
「男同士なんて、周囲に祝福されるような恋じゃねえし、下手すりゃ、差別されたり、疎外される可能性だってある。家族だって、そうだ。きっと、誰も祝福なんてしねえだろ」
最初のコメントを投稿しよう!