大逃亡

23/25
775人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
真剣な眼差しで、月山薫は俺の目を見返す。 「俺達の事で、親しい人間に迷惑を掛ける事だってあり得る。家族や親戚が、後ろ指さされるかもしれねえ」 いま、月山薫が話しているのは、現実だ。 恋愛なんて、夢物語じゃない。 しかも、同性となれば、もっと厳しいはずだ。 「お前、本当にそれでいいのか?そうなった時に、後悔しないなんて言えるか?今、お前を理解してくれてる奴ら、全員が居なくなるかもしれねえ。それでもいいと、本気で思えるか?」 言われて、考えた。 父さん、母さんの事。 卓人の事。 親戚の事。 学校の友達。 村沢さんや、三國さん。 それ以外の人達の事も、全部。 それでも……。 全員を失う事になったとしても…。 「それでも……あんたを選びたい。俺、あんたがいい」 極端に、どちらかを選べと言われたら…。 片方しか選べないなら…。 俺は、月山薫を選ぶ。 「この先、何があっても、どんな場面に出くわしても、俺は、あんたを選ぶ。何度でも、迷わずに」 そして、目を逸らす事なく、ハッキリと意思を持って答えた。 「その覚悟はあるよ」
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!