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真剣な眼差しで、月山薫は俺の目を見返す。
「俺達の事で、親しい人間に迷惑を掛ける事だってあり得る。家族や親戚が、後ろ指さされるかもしれねえ」
いま、月山薫が話しているのは、現実だ。
恋愛なんて、夢物語じゃない。
しかも、同性となれば、もっと厳しいはずだ。
「お前、本当にそれでいいのか?そうなった時に、後悔しないなんて言えるか?今、お前を理解してくれてる奴ら、全員が居なくなるかもしれねえ。それでもいいと、本気で思えるか?」
言われて、考えた。
父さん、母さんの事。
卓人の事。
親戚の事。
学校の友達。
村沢さんや、三國さん。
それ以外の人達の事も、全部。
それでも……。
全員を失う事になったとしても…。
「それでも……あんたを選びたい。俺、あんたがいい」
極端に、どちらかを選べと言われたら…。
片方しか選べないなら…。
俺は、月山薫を選ぶ。
「この先、何があっても、どんな場面に出くわしても、俺は、あんたを選ぶ。何度でも、迷わずに」
そして、目を逸らす事なく、ハッキリと意思を持って答えた。
「その覚悟はあるよ」
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