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「ちょっと黙ってろ、阿呆」
そう囁かれたと思ったら、唇を塞がれた。
奴の唇で…優しく…。
驚きすぎて固まっていると、少し離れた奴が、意地悪な笑みを浮かべながら、また小さな声で囁く。
「目ぇくらい閉じろ。バーカ」
その声……!
やけに艶を含んでいて、ゾクリと身体に響いた。
ムカつくのに、逆らえない。
言われた通りに、そっと目を閉じると、月山薫の唇が、俺の唇に重なるのが分かった。
壊れそうなくらい、胸がドキドキし過ぎて心臓が痛い。
身体中が心臓になったみたいに、鼓動が激しく鳴り響いて、煩くて仕方がない。
いっぱいいっぱいな俺から離れた月山薫は、そんな俺の様子を楽しむかのように、意地悪な笑みを絶やさない。
「お前、初心者だったな。これから、色々と教えてやるよ。手取り足取りな」
そう色っぽく囁いた月山薫は、ニヤリと妖艶な表情を見せた。
知らなかった……。
こいつが、こんなにも色っぽいなんて……。
これが、きっと『大人の色気』ってやつに違いない。
そんな月山薫にドキドキしてるのも、不慣れな自分を見抜かれてるのも悔しくて、負け犬よろしく、苦し紛れに「エロオヤジ」と、捨て台詞めいた言葉を投げつけてやった。
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