大脱走の果てに

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*大脱走の果てに・1* 「それじゃ、荷物纏めろよ」 「は?何で?」 予想もしなかった、月山薫のいきなりの提案に面食らった。 「帰るんだよ」 「何処に?」 「日本に決まってんだろ」 「誰が?」 「俺と、お前が」 「嫌だ」 「はぁ?」 俺の答えは予想外だったのか、今度は月山薫が、面食らったように驚きの声を上げる。 「だって、そうだろ。何で、帰らなきゃいけないんだよ。意味分かんねー」 俺の言葉に、月山薫のこめかみがピクリと引き攣った。 「じゃあ、何か?てめえは、このまま、ここに残るって言ってんのかよ?」 「当たり前だろ。あと二週間ちょっとで留学が終わるのに、何で、中途半端にいま帰んなきゃいけないんだよ。勿体無いだろ」 「はぁ?二週間ちょっと?」 どういう訳か、月山薫の頭の上にハテナマークが沢山見える。 え? なに? どういう事? 「だって、お前、村沢に…」 「あ、うん。ちゃんと村沢さんに言ったよ。春休みの間、短期留学に行って来るって」 「…………」 そう答えた時の、月山薫の何とも言えない表情を、きっと一生忘れないと思う。
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