大脱走の果てに

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「サルの、お勧めねぇ…」 「サルって呼ぶな。本当に、美味しいんだって。嘘だと思うなら、食ってみろよ」 「どうせ、バナナなんだろ」 「黙れ、クソピアニスト」 好きな人に、想いを返してもらえる。 それって、凄い事だと思う。 奇跡に近いと思うんだ。 だから、ずっと…。 ずっと、こいつの傍にいられるような、そんな男になりたい。 そんな、大人になりたい。 もっと、成長したいと思える。 そんな相手に巡り会えるのも、奇跡。 だから俺も、月山薫に、そう思ってもらえる人間でいたい。 隣りを歩く月山薫を、ふと見上げる。 すると、悪態をつきながらも、奴が優しい目で俺を見る。 それだけで、満たされる。 あぁ、そうか…。 これが、幸せってやつなんだ。 「なに笑ってやがる、サル」 「別に~」 幸せすぎて、笑いが止まらないなんて、ちょっと悔しいから絶対に言ってやるもんか。 そう思いながら、何処までも続く青い空を振り仰ぐ。 幸せすぎて、目に映る全てに感謝したくなった。 「おい、余所見してんじゃねえよ」 月山薫はそう言って、空を見上げていた俺の肩を抱き寄せた。 END
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