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俺の人生、終わった……。
ガックリと項垂れるも、諦め切れずに鞄から携帯を取り出す。
もう、いるわけないよな…。
けど、『もしかしたら』、という事があるかもしれない。
ダメ元で、約束の場所だった、ジャズBARの『Hiding place【隠れ家】』に電話してみる。
コール五回目で繋がった。
『はい、Hiding placeです』
電話に出たのは、お店のマスターである、村沢優さんだった。
今回の約束は、月山薫がHiding placeでよく演奏しているという噂を聞いて、俺が店に足繁く通い、マスターである村沢さんに頼み込んで、やっとの事でこぎ着けた約束だった。
なのに、その村沢さんの面子まで潰した事になる。
申し訳なさすぎて、涙が出そうだ。
「すみません!あの、桜庭奏です!」
『あぁ、桜庭くん。時間になっても来ないから、心配してたんだよ。どうしたの?』
村沢さんは、怒った様子もなく、心配気に気遣ってくれた。
「すみません。人身事故で電車が止まって、足止めされてて。折角、村沢さんがアポ取ってくれたのに…本当、すみません!」
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