現実…

3/25
前へ
/323ページ
次へ
俺の人生、終わった……。 ガックリと項垂れるも、諦め切れずに鞄から携帯を取り出す。 もう、いるわけないよな…。 けど、『もしかしたら』、という事があるかもしれない。 ダメ元で、約束の場所だった、ジャズBARの『Hiding place【隠れ家】』に電話してみる。 コール五回目で繋がった。 『はい、Hiding placeです』 電話に出たのは、お店のマスターである、村沢優(むらさわ すぐる)さんだった。 今回の約束は、月山薫がHiding placeでよく演奏しているという噂を聞いて、俺が店に足繁く通い、マスターである村沢さんに頼み込んで、やっとの事でこぎ着けた約束だった。 なのに、その村沢さんの面子まで潰した事になる。 申し訳なさすぎて、涙が出そうだ。 「すみません!あの、桜庭奏(さくらば かなで)です!」 『あぁ、桜庭くん。時間になっても来ないから、心配してたんだよ。どうしたの?』 村沢さんは、怒った様子もなく、心配気に気遣ってくれた。 「すみません。人身事故で電車が止まって、足止めされてて。折角、村沢さんがアポ取ってくれたのに…本当、すみません!」
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

789人が本棚に入れています
本棚に追加