混じる日常で

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「シキ」 最近、季節に追いつけなくなった。 気付いたら春が目の前に居て、新しさの中で意識を保って、湿気を含んだ部屋の空気に慣れないまま、夏の暑さと蝉の声が身を焦がす。 それから、いよいよ準備も万端だ、という頃に鈴虫が鳴き始め、浮かれた半袖のワンピースから伸びる腕をつめたい風が撫でる。 橙と紅の心地よさや儚さを感じる一瞬が過ぎ去り、賑わう街とイルミネーション、粉雪が舞う世界の眩しさにくらくらして、ひと眠りすると、窓の外にはぴかぴかのランドセルを背負った子どもの声。 桜の花びらが宙を舞ったら、もう春に包まれているのだ。 僕は、きちんと一周できているだろうか。ほんとうは、一人だけひとつ前の春の中に取り残されているのではないか。
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