あの子と私

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最近、才能に気付いた他のみんなが圭の周りに集まるようになった。 それを掻き分けてはいけない。 私も加わるのだ。 『圭ファン』の一人、として。 圭のことが好きで、 才能を羨み、嫉妬しているということ。 「ちゃんと、つたえるの。」 「…ん。」 そして一緒に絵を描こう。 あの子なら、笑顔で承諾してくれるはずだ。 圭を負かすんじゃない。 自分に勝つのだ。 「…そうだ、ユキ。写真を撮ろう。」 「ユキをかいてくれるの?」 「話が早いじゃないか。ママにカメラ借りてくるから待ってな」 「うん!」 例えまた、嫉妬に駆られても、 ユキさえいれば少しは楽になるだろう。 圭との話題もユキのことについて話せばいい。 「…はぁー」 「ここちゃん?」 ユキを描く。 圭の隣で、共に筆を動かす未来。 「なんかさ、楽しみになってくるよね、明日がさ」 「…ここちゃん!」  エプロンセンセイに褒められるかもしれない。 妄想を膨らませながら、カメラを借りにドアを開いた。
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