第2章

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「何でって…オレ、十七歳だし未経験のヤツのが多いと思いますけど」 「いやだって、お前なら入れ食いだろ?お前みたいな清潔感のある可愛い系、絶対下心あるヤツの見てくれだし。何でやっちゃわないわけ?」 外見に関しては、不特定多数に好かれようとしたのではなく、ただただ亮の言うとおりにしていったらこうなっただけだ。しかし亮の助言は、残念ながら保護者目線なので、取り入れても取り入れても一向にそういう意味では意識してもらえない。 「どうせ高望みしてるんだろ」 これだからイケメンは…となぜか店長はこちらを罵ってきた。 恥を忍んで童貞だと明かしたのに、その上詰られるなんて理不尽だ。 「本当に好きなひととだけセックスしたいと思うことが高望みなら、そうかもしれませんね」 ふてくされた気分になってきて、ため息混じりに呟けば、店長は何故かこちらをぽかんと見ていた。 奇妙な間の後、恐る恐る、といった体でこちらを伺ってくる。 「お前、俺のこと口説いてる?なにその桃色のオーラ」 「桃色…?良くわかんないですけど、頼まれたって嫌です」 「だよなー!はぁ、顔面が整ってるやつの攻撃力ってすげぇな」 裕幸の与り知らないところで何かを被弾した店長は、罪滅ぼしのつもりか、裕幸のかばんにさらにDVDを突っ込んできた。 しかし、ちらっと見えたタイトルには、何かとんでもないことが書いてあった気がする。 看過出来ずに、無言で追加されたパッケージを取り出して渡すと、店長は声もなく戦いていた。 「おぉおお!これはお前にはまだ早かったな!」 口に出すのも憚られるようなタイトルをなるべく見せないようにしながら、さりげなくエプロンのポケットに入れる。ダンボール箱に戻す気はないのだと察し、裕幸は今見た全てを可及的速やかに忘れる努力をした。 「…口説かれてるみたいな気分になりました?」 わざと声を少し落として尋ねると、店長はあからさまにぎくりと顔を引きつらせた。 「おぅ。なったなった。思いっきりなった」 数歩下がってわざとらしくおどけて見せる店長を横目に、胸中でため息をつく。 亮さんもこのくらいチョロかったら良かったのに。 現実の亮は、いくら露骨にアピールしても、なしのつぶてだ。 おとなで遊ぶな!と喚く店長に構わず、お疲れさまでした、とことさら爽やかに挨拶をして立ち去ろうとする。
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