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思ってもみなかった変化は居心地が悪いばかりでもないけれど、率直に言ってとても疲れる。
「まさか本当に、ご両親にご挨拶しに行くことになるとは…」
『やっぱり亮さん、オレが親に言うはずないって思っていたね?』
「いつかは、とは思っていたけど、まさか交際始めて四日後に報告されるとは思わなかった」
『親に言ったのは初日だよ。ほんと、自分でもびっくりした』
屈託なく笑う声はどこまでも楽しそうで、亮もまぁいいか、という気分になった。
今までずっと、裕幸にとって生きていくことは苦しいことが多かったはずで、少しくらい甘やかしてくれるおとながそばにいることは、きっとそう悪いことじゃない。
特に彼は見せかけているほど単純じゃなくて、傷ついても苦しんでも、明るい笑顔の下に隠してしまうから。
「今度、ご両親にご都合の良い日訊いてくれる?」
『分かった。大安がいいよね』
「……君何か違うこと想定してない?」
浮かれた様子の裕幸に脱力しつつ、通話を終える。
年若い恋人との会話に大いに消耗したが、最後に耳に触れた笑い声は、容易く亮を穏やかな気持ちにした。
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