第1章

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聡い少年は、亮の反応のぎこちなさを見抜いただろうに、珍しく矛先を収めない。いつもならこういうとき、すぐに察して話を変えてくれるのに、今日はごまかされてくれる気はないらしい。 亮はしばし迷った末、言葉を選んで伝える。 「…軽薄な感じがする」 しかし言った途端、すぐに後悔が押し寄せてきた。高校生相手に、何を動揺してるんだろう。 少し俯き顔を隠しながら、早足で歩き出す。 背後で裕幸が噴出したのが気配でわかった。ますます自責の念が募る。 「ケーハク」 「今僕のことバカにした?」 「してないしてない」 可愛いな、って思って、と、嬉しくないことを言いつつ追いかけてくる。 ここにきてようやく遊ばれているのだと分かった亮は、少し面倒くさくなって、歩く速度を緩めた。 裕幸もすぐに追いついてきて、再び横に並んで歩き出す。 ついこの間まで、亮より頭一つ小さかったと思うのだが、いつの間にかずいぶん大きくなった。今では亮と肩を並べるくらいだ。この分だと抜かされる日も近いのかもしれない。 小さいときはあんなに可愛かったのに、最近ほんと、可愛くない。 「いつもの方がいいよ」 髪型を変えて大人っぽくなった裕幸は、何だか亮を落ち着かない気分にさせる。 目を伏せて呟くと、裕幸は至近距離からこちらをじっと見つめてきた。 いつもにこにこ笑っている裕幸が、顔から表情を消してしまうと、もともと容貌が優れているだけあって、それだけで何だか迫力がある。 たじろいだ亮の気持ちを知ってか知らずか、しばらくしてから裕幸はふと眼差しを緩めた。 「…じゃあ、元の髪型に戻すよ」 「え?でも、せっかく変えたのに、僕の意見だけで決めなくても…」 「んー、じゃあ、次美容院行くときは、前の髪型に戻すから」 そんなに拗ねないで、と何だか妙に甘く聞こえる声で囁かれる。 ほんとに、最近ぜんぜん可愛くない。
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