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ここには裕幸と過ごした六年分の思い出があり、ふとしたときに交わした会話を思い出してしまう。
そうして日々、裕幸は昔から本当にそういう意味で亮のことが好きだったのだと、繰り返し思い知らされている。いまだに認めるのは、少し恐ろしいが。
来月で裕幸は十八歳になる。
まだお酒は飲めないけど、もう結婚は出来る。犯罪を犯せば裁かれるのは少年法だが、車の免許だって取れる。
大学生にもなれば、セックスを済ませている子も多い。まして裕幸はモテるだろうから、本来ならもうある程度経験があったっておかしくなかった。
それなのに亮はいまだに応えることも突き放すことも出来ず、ただそばに居続けている。
手にした本を書架に戻し、カウンターへ向かうと、何人かの親子連れが列を作って待っていた。
急ぎ端末に向かい、亮なりに笑顔を作って図書を受け取る。
しかし眼前の仕事の煩雑さも、裕幸のことを頭から振り払うことは出来そうになかった。
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