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切々と訴えるにつれ、どんどん早口になっていく。
それまで一種頑なに目線を合わそうとしなかった裕幸が、不意にこちらを振り返った。
いつもはどこか世慣れた印象のある瞳が、今は不安げに揺れている。
「ねぇ、それってオレじゃだめ?好きだよ。好きだ。オレずっとずっと亮さんのこと好きなんだ」
裕幸から好きだとは何度も言われたけど、こんなに悲しげに告げられたのは初めてだった。
その事実に、亮は切なくなる。同性を愛するということは、それほどまでに異端なのか。
好きな相手に想いを伝えるだけで、こんなに苦しまなければいけないのなら、やはり裕幸には普通に異性を愛して欲しかった。
裕幸のことを大切に想うからこそ、明るい未来を歩んで欲しかった。
「好きになってごめん。分かってるんだ本当は。亮さん、オレからこんな言葉、一生聞きたくなかったよね。ごめんなさい。でも、拒絶しないで。受け入れて」
通いなれたはずの華北図書館は、今日はなぜだかひどく寒々しくて、天井の高いロビーで立ち尽くす青年をより一層孤独にする。
項垂れ、手にしたタオルを握り締める裕幸の顔は、長めの前髪に隠れてよく見えない。
「………もうひとりでは生きられないよ」
小さく落とされた懇願は、痛みを耐えるのによく似た色をしていた。
きつく握りこんだ拳は熱を失って青白く、亮はどうしても、この指を暖めてあげたいと思ってしまう。
「だめじゃないよ」
どうして今さら突き放すことが出来るだろう。
遠い夏の日。少年が自ら冷たいところへ向かって歩いていくのを、ただ見送ってしまった。それからずっと、強くやさしい裕幸がひとりでもがいているのを、見守ることしか出来なかった。
だけど、もしふたりの関係がもう少し違うものだったら、彼の痛みを分け合うことが出来たのだろうか。ただ見ているだけじゃなくて、裕幸が守ろうとする平凡な幸せをいっしょに抱きしめてあげられたら、彼は今も子どもでいられたかもしれない。
全てを受け入れるつもりで、腕を伸ばして震える肩を包み込む。傷つき揺れる眼差しを捕らえて微笑み、裕幸の肩に頬を預ける。肩口は雪でまだ湿っていて、冬の匂いがした。
しばらく裕幸はされるがままだったが、亮が背中に手を回すと、急に肩をつかんで引き離した。
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