第2章

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青山裕幸が初めてひとを好きになったのは、十歳のときだった。 そして、その相手は自分と同じ性を持っていた。 悩みもしたし、苦しみもした。だけどどうしても諦めることが出来ずに、以来七年間、今も同じ人物に片想いをしている。 そんな経緯から、裕幸はこの年頃の男子にしてはひと一倍恋愛に対してあれこれと考えてきた方だと思う。しかし、まだまだ自分の知らないことは多そうだと、大量のDVDを前に腕を組んだ。 裕幸は高校一年の頃からレンタルビデオ屋でアルバイトをしている。なぜレンタルビデオ屋を選んだのかというと、亮が働く図書館の仕事と、似通った点がたくさんあると思ったからだ。それに、元々亮の影響で読書が好きだった裕幸は、高校生になった頃から映画にも興味を持つようになっていた。 高校生の裕幸の業務時間は短い。仕事が終わり、さてまた何か映画でも借りて帰ろうかとかばんを持って倉庫に入ると先客がいた。いくつかのDVDを手に箱を漁っていたのは、休憩中のはずの店長だった。 「お疲れさまです。店長も映画借りていくんですか?」 声をかけながら近寄ると、しゃがみこんでいた背中がぎくりとこわばる。その反応に首をかしげて立ち止まると、観念したように向こうから話しかけてきた。 そして、見せられたのが大量のAVの山である。 「すっげぇ…」 裕幸は、ここでバイトを始めてもう二年も経つ。当然こういったものを目にする機会もそこそこあったが、高校生である裕幸は性的な商品を担当させられることはない。この店舗を任されている店長は、ヒゲ面ぼさぼさ頭で一見胡散臭いが、中身は意外に真面目だった。 初めて見る桁外れの量を前にして素直に驚きを露にすると、なぜか店長は得意げな顔になった。 「まぁ、お前もそろそろこういうの、取り扱ったっていい年頃だよなぁ」 自分より遥かに年若い青少年をからかうのが面白いのだろう。訳知り顔でにやけた笑みを浮かべる彼は、この状況が楽しくなってきたらしい。きいてもいないのに、勝手に店長のお勧め順に作品を並べ換え始めている。
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