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「……………つまり亮さんも、付き合ってくれるつもりだったんですか?」
地を這うように低い声にい訝しみつつ、正直に答える。
「ううん。そういうつもりはなかった。せめて成人してからかな、と」
「……やっぱり成人するまで待たせるつもりだったんですね。しかも、自分のことを好きだって分かっている相手と、お付き合いをする気はないけど同棲には誘うつもりだった、と…?」
「違う、同居。ルームシェア」
裕幸は頭を抱え込んで呻いた。
「亮さん、その発想絶対おかしいよ…!オレがガマン出来なくなって、ある日突然襲いかかったりしたら、とか考えないの?」
不穏なことを言う年下の恋人を、じっと見つめる。確かに体力にはまるで自信のないインドア派の亮は、活発な男子学生に押さえ込まれたら手も足も出ない自覚はある。
だけど全く不安はなかった。
「だって裕幸くん、僕が嫌がることは絶対にしないでしょう?」
最近気づいたのだが、裕幸は時折わざと露悪的に振舞ったり、こちらを試すようなことを言う。
普段は明るくて穏やかな彼の、不意に見せる二面性に初めは面食らったけど、今は何となく裕幸が何を求めているのかが分かる。
気づいたときは受け止めてあげたい。出来ることなら何だって。
「……しません!しませんけどっ」
整った顔を見たこともないほど赤くして首を横に振る裕幸は、素直にかわいいと思う。
こんな年の離れたおじさんではなく、同じ世代の女の子にだって十分通用するだろうに、もったいないと思ってしまうのは、裕幸には言えない。
「ただ、さっき君は周囲にバレるのはイヤだよね、って僕に訊いたけど、裕幸くんはご両親に打ち明ける覚悟はある?」
正面から問いかけると、裕幸は息を呑んだ。
「僕としては、未成年である君をご両親から引き離すのなら、きちんと関係を説明する義務があると思ってる。もちろん、君が抱えるわだかまりについては、触れるつもりはないけど」
彼の両親に伝えることが正しいことなのか、本当はまだ少し迷っている。
でもルームシェアの相手が同級生や親戚ならともかく、得体の知れない年の離れた友人では、ご両親も不安だろう。彼がいつまで自分のことを想ってくれるか分からないが、どちらにしろ裕幸がこの先女性を好きになる可能性は低そうだ。それなら、一度きちんと説明した方がいい。
そうまでしてでも、裕幸をあの暖かな家庭から連れ出してあげたかった。
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