第10章

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とうとう、受け入れてしまった。裕幸はおそらく心から喜んでくれたけど、本当にこれでよかったのだろうか。 同性愛を、歪んだ性嗜好とは思わないけれど、やっぱりマイノリティーだし、こどもを授かることは出来ない。 本当に後悔しないのか、せめて成人してから本人の意思で選ばせてあげたかった、と思うのはおとなの勝手な言い分だろうか。 強引に設けたモラトリアムを少年はどう受け止めたのか。 つらいことも、悲しいことも。幸福と同じくらい裕幸を豊かにはしてくれたけど。目に見えないそれらの痕がこれから先、痛み以外の何かを与えてくれるといい。 今まではただそれを祈ることしか出来なかったけれど、これからは違う。 そばにいて支えて、そうすれば今度こそ、彼をただの子どもにしてあげることが出来るだろうか。 冷え切った通路で亮はひとり、今はもう遠い夏の日の少年を想った。
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