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勉強中ではあるが、すこし穏やかな時間。チーム結成当初に比べれば格段に距離の縮んだ空間を嬉しく思いつつ、アンリは二人に紅茶を差し出した。ついでに、自分のカップにも余った紅茶を淹れる。
「マギのほうが器用でしょ。占いって、いろいろするじゃない…水晶の準備とか、気力の集中とか…」
「あんなの慣れだよ、それにアンリも向いてると思う」
言いながら紅茶を啜ったマギは、「あっつ」と顔をしかめた。途端、ルイードがチッ、と舌打ちをする。
「猫舌なのに油断して飲むからだろ」
「おいしそうだったんだもん」
「だもん、とか言うな。気色が悪い」
「ベルクヴァイン~、ボクに八つ当たりしないでよね~。そんなに難航してるの?」
複数の資料を同時に広げ、あちらこちらの文章を引用する作業のルイードは、誰よりもテーブルのスペースを広く使っていた。
そんなルイードにぴたりと寄り添うようにして、マギが彼の手元を覗き込んだ。
「どこで詰まってるの?」
「詰まってるわけじゃない」
「でも難しい顔してるじゃん」
「…この資料のこの部分と、こちらの資料の、ここ。どちらを先に記述すべきか、少し悩んでいただけだ」
「そんなことぉ?こっちが先でいいんじゃない」
「雑すぎるだろ」
てっきり嫌がるかと思ったルイードは意外にも注意することなく、マギをそのままにさせている。
(…あれ?もしかして二人って、仲良いのかな…)
否、仲良くなった、というべきか。
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