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「ちょっと、髪の毛乱れ――」
「まあ」
抗議しようと振り向いたが、遮るようにルイードの声がする。
その顔を見上げると、想像以上にやわらかで、幸せそうな笑みがあって、アンリは瞠目した。
「…植物どもと居たときのお前はなんだか楽しくて、幸せそうで、可愛かったから…多少は許すけどな」
ひどく嫉妬深い発言だったが、アンリにはそれ以上に気になるところがあった。
(ルイもいま、なんだか見たことないぐらいに楽しくて、幸せそうな顔してるんだけど…)
そんな彼と、いま一緒に居るのは、アンリだ。
つまり幸せの源は自分だ――と気付いた瞬間、一瞬にして顔が真っ赤になってしまう。もう昨夜から何度も何度も顔を赤らめては来たが、下手をするといまがいちばん恥ずかしい。
照れに耐え切れず顔を覆うと、不審に思ったルイードが「アンリ?」と顔を覗きこもうとする。
それを阻みながら、アンリは思った。
(おれも、いま、幸せだよ――)
恋愛偏差値が低すぎるあまり、いまはまだ口に出せそうにないけれど。
いつか言ってあげよう――だからそれまで、無事にルイードのファンから逃げおおせなければ。
そんな難題に、まるで新しい薬品のレシピを見たときのような気持ちで心が跳ねたのを、アンリは確かに感じていた。
エリオル男子魔導学園 -Team Rose- 完
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