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「わかった。週二日で譲歩する」
「じょ、譲歩になってないんだけど…。だいたい、そんなに頻繁にルイと会ってたらルイのファンに殺される」
「俺だってアンリのファンからお前を守る必要があるんだ。ちょっとぐらい俺と噂になっておけ」
優しい手のひらのぬくもりとは正反対に、非常に納得の出来ない理屈を放たれ、アンリは絶句した。
――噂になったら、瞬間、死が待っていると言っているのに。だいたい…。
「お、おれにファンなんか居ないよ!?」
「居る」
「誰だよ」
「温室に妙なのがウジャウジャしてただろ」
「あれはアウラルネたちで、ただの友達というか、部活で会う…なんだろ…ある意味顧問とか、そういう存在でしょ」
なに言ってんだ、とルイードをねめつけたが、当の本人は涼しい顔だ。
自分の意見を微塵も曲げるつもりがない、そんな表情に、アンリはため息をつく。
「…だいたい、あのお喋りたちに関係がバレてみろよ。瞬く間に言いふらされる…」
おなじ部活の面々にルイードの関係を言いふらされるのはまず間違いないだろう。そのうえ、密会に来るという生徒たちにもアレコレ言いかねない。エリオル歴が長い植物たちにとって、たった六年で卒業していく生徒たちなど、暇つぶしの一種だ。
嘆いていると、ルイードがアンリの黒髪をぐしゃぐしゃと乱暴に撫ぜた。
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