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――ヤバイ!
そんなことはもっと前から重々感じているのだが、改めて思わずにはいられない。
なにせ、グリフォンがスゥーーー…と大きく息を吸い込みはじめたのだ。
なにか、攻撃が来る。その前兆。そんな予想をせずにはいられない、今までと異なる動き。
アンリはぎゅっと目を瞑り、最悪、人生が終わるかもしれない覚悟を決めた。
けれど、魔導学校の生徒としておちおちやられるわけにもいかない。防ぎきれる自信はまったくないけれど――なにせアンリにとって詠唱魔法は専門分野外だ――それでも、口の中で呪文を唱え、防御の準備を整える。
――どうか、どうか“ヴェール”の魔法が効きますように…!
それは防御の呪文だ。ヴァリアと呼ばれるより高度な呪文は今のアンリには難しいけれど、軽度の呪文、ヴェールであれば成功させる自信があった。
祈るような気持ちで古代の言葉で構成された難解な言葉を繰る。
決死の思いで呪文を唱え終わったとき、アンリの周囲にキラキラッと薄い膜のようなものが現れた。ヴェールの魔法が成功した証だ。
――やった…!
けれど、安堵したのは、束の間。
直後。
「ウォオオオオォォォォォン!!!!!!」
全身がビリビリと麻痺するような、咆哮。
その声の衝撃だけで、目の前の薄い膜がパリンッと破れていく。
「うそ…」
咆哮。
そんな簡単なもので、獣は魔法を簡単に打ち破ってしまう。
アンリは愕然と目を見開いた。
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