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「今から地上に降りる。お前、混乱解毒剤<コンフュージョン・ポーション>は持ってるか?」
「え…?あ、あるけど」
「じゃあ、地上に向かって降りていくタイミングでそれをあのグリフォン目掛けてぶちまけろ」
淡々とルイードが言うので、思わず「わかった」と頷きそうになった。しかし素直に飲み込むには状況の理解がまったく追いついていない。
アンリの不思議がる面持ちを認めたルイードは見るからに面倒くさそうに目をすがめた。
「説明はあとだ。いくぞ」
――えっ、ちょ、待って…!
というアンリ決死の静止の言葉は声にならなかった。
ルイードが宣言通り、さっさと地上に向かって急降下しはじめたからである。
――そもそも、なんで混乱解毒剤が要るの…!?
わからない。
なにもかもが、わからない。
そもそもをいえば、グリフォンに襲われていることはおろか、ルイードと行動を共にしている現状からして意味不明なのである。
アンリと、このルイードとでは、明らかに格差がある。
出自も、能力も。
それなのに自分はいまルイードと行動を共にしている上、助けられ、揃ってグリフォンに向かおうとしている。
これは、悪い夢なのかもしれない。
大混乱にまみれながらもなんとかポシェットから混乱解毒剤を取り出しつつ――アンリは現実から逃避するように、こんな現状を生み出す諸悪の根源となった日を思い出していた。
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