一、

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*  俊也との出会いは、鷹森病院の廊下だっただろうか。流星の母親の体調が悪く、小学生時代に入退院をくりかえしていた時期だ。段々入院している時間の方が長くなってきて、子どもながらに心配で毎日顔を覗かせていた。 丁度母親のお見舞いに来た時に、偉そうに歩いている俊也を見つけた。高そうな子ども服ブランドに、お稽古道具を二個ぐらい手に持ち、真面目そうな眼鏡の神経質そうな、ぴんと張り詰めた空気の男児だった。  年下だとは思うが、視線があうとその大人びた冷めた視線に不快で、逸らせなかった。思い切り睨みつけてお互い言葉は発しないが、立ち止まって観察していた。 『俊也』  理事長がすぐに声をかけ、頭を何度か撫でて嬉しそうに話しているのに対し、俊也はつまらなそうに表情も変えずに黙って宙を見ていた。 その時、流星は学校のサッカークラブに所属していて、慌ただしく母親の見舞いに顔を出してはサッカークラブへ戻っていく生活をしていた。  なのでお互いを物珍しく見るぐらいで接点はそんなにないはずだった。
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