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「うっせー。キモい事、聞いてんじゃねーよ」
「……でも貴方、あれ以来、駄目になっちゃったじゃない。鏡」
「黙れ」
「美容師が鏡を怖がるって致命的なんだからね」
「分かってるってば。っせーな。禿げオカマ野郎」
んべ、と舌を出すと、店長は顔を真っ赤にして怒ったのち、流星の頭をぐしゃぐしゃに掻きまわした。
*
母親が亡くなったのは中学受験を控えた三年のいつだったか。季節を感じない不快な日だったように思える。
借金を繰り返し蒸発した親父のせいでお葬式に親戚がほぼ来ず、流星の学校の同級生や病院の医者、近所の人たちが自分を痛ましい目で見ていた。
『あの子、どうなっちゃうの?』
『病院の入院費、未払いなんですって』
母の死を悼んでやれなかったのは、周囲の雑音の多さもあると思う。
この家を売り払い、小さなアパートでも借りて住む場所を探さなければいけない。
今後のことをぼんやりと思うと、億劫で煩わしかった。
ろうそくの火を眺めながら、この先そんなに輝くこともないんだろうなと諦めていた時だった。
とっくに自分の家かのように上がりこむようになっていた俊也が玄関を開けて走ってくる。
『流星さん、大丈夫!?』
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