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店長の発言に俺が本気で嫌な顔をすると、ドッと笑い声が広がった。ヘアサロン『Be』は8席しかない小じんまりしたヘアサロン。
ただ店長の奥さんが元ヘアメイクだけあって流行りに敏感でオシャレで、また駅前という実地のおかげで閑古鳥が鳴いたことはない。
店長、奥さん、流星、他二名ので計五人のスタッフで働いていたが、色々と訳があり一人募集した。
「は、はじめまして。高宮千里(たかみや ちさと)です。よろしくお願いいたします」
真っ赤な顔でお辞儀した新人は、肩までの髪を綺麗にアイロンで巻いて、薄化粧の中、ピンク色の唇が艶やかな可愛らしい女の子だった。一七〇センチしかない流星の肩ぐらいしかなく、ちまちましたハムスターみたいな動きで愛嬌あった。
「ということで、新人スタッフの指導は流星にお願いするから。泣かさないでね」
「口説くなよ」
「優しくしなさいよ」
「うっせーな。ハラスラだっつうの」
適当に先輩スタッフたちを追い払い、びくびくと震えながら千里は流星を見る。
流星の耳についているいくつものピアスを見て怯んでいるのが分かった。
「おい、千里」
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