一、

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 お団子頭の同僚は、自分だって独身なのを棚上げして流星をからかっている。 「でも、一緒に住んでる人、医者ですよね? 医者があんな風が吹いたら壊れそうなボロアパートに住むもんですかねえ?」  事務のスタッフまでからかうので睨みつけるが、二人は流星の睨みなどお構いなしで喋り続けた。 「だから、給料が少ない流星が、頼みこんで一緒に住んでもらってるのよ」  事務スタッフと同僚が好き勝手に言いながら笑う。 「あら、給料少なくて悪かったわね。流星みたいに訪問美容師してくれるなら給料上がるわよう」 「えー。パスです。二足のわらじは私には無理だわー」 「っち。ここはオカマと女しかスタッフいねえのかよ。次は男を入れろよな」  つまらない会話に嫌気がさした流星はそう言うが、隣の千里は顔を真っ青にしていた。 「あ……女ですみません。が、頑張ります!」  真っ青な顔でへらりと笑う。逃げ出したりせず根性が少しはあるのではないかと、少し見直していた。
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