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技術の方に関しては問題もなく、髪を洗う練習台に流星がなるが、とても丁寧で気になる点はない。おどおどした様子は、きっと経験を積めば多少は改善されるはずだし、頭を抱えるような相手ではなかった。
ただ、じっと見てくるので『何?』と聞くと横を向いたり逃げたりする行動だけは理解できない。言ってくれないと何がしたいのか全くわからない。
「新人の担当になってみてどうよ」
「っち。うっせーな」
昼の休憩時に、煙草を吸おうと外の喫煙所に出た流星を、店長は追うかの如く喫煙所に入る。
酒は飲むが煙草は吸わない店長が、わざわざ来る辺りで嫌な予感しかしなかった。
「いつまでもガキくさい喋り方止めなさいよ。もう三十なんてすぐよ。すぐ」
「そんな話がしたくて此処に来たわけじゃねえだろ」
駅前の灰皿や喫煙スペースは大幅に撤去され、トイレ前の8人も入らないだろう小さな箱の中で煙草を吸っている。街を綺麗にしようと動きだしたせいだったが、肩身の狭い思いをしていた。
だが、外で堂々と吸わなくなった辺り、流星はすっかり丸くなっていたのだ。
「あのねえ。ほら、鷹森病院の院長さん」
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