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『お前、さっさと帰れよ。親が心配するぞ』
『そうだ。このアパートの天井全部貼り変えるように言っておきますよ』
『誰にだよ。馬鹿か』
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玄関に座って靴を履こうとしていた時だった。激しい雨が斜めにザアザアと窓や玄関を打ちつけていた。激しく乱れ、音を立て唸る。この弱々しく落ちる雨音よりも、外の激しい雨の方が俺の気持ちをよくあらわしている。大きくて古臭い木造アパート。そこに今、雨の格子に閉ざされて、二人きり。
飛び出そうとしていた流星の後ろから項にぴとりと冷たい何かが当たった。
『うわ』
『……流星さんって蝶みたいですよね』
それが俊也の眼鏡で後ろから覆いかぶさるように抱き着かれたのだと理解した。
後ろから耳元で囁かれ、全身に緊張走る。
『重い。離れろ』
『いつも綺麗な姿で自由に飛びまわる蝶。俺は貴方が自由に飛び回るのを見るのが好きでした。塾や稽古で自由な時間がなかった自分の代わりに自由に飛び回る蝶』
『どうしたんだ。よくしゃべるな』
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