一、

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 後ろからだ抱きしめられた腕の強さに、ふりほどけれないのだと気付く。勉強ばかりでもやしみたいだと侮っていた相手が、自分より十センチ以上背を伸ばし、体格も華奢な流星に比べてがっしりしている。 『蝶を捕まえたくなっただけです。この雨の格子の中……俺の手の中に』  抵抗するよりも早く、後ろから抱き抱えられ、敷きっぱなしだった布団に投げつけられた。 『ふっざけんなっ』  覆い被さってきた俊也に何度も蹴りを入れるが、びくともしない。顔を殴っても止めない。 それどころかその手を掴み、布団に押し付けると荒々しくキスをしたきた。 『――っつ』  その乱暴な行為に一瞬どまどった流星だったが、押しつけられる下半身の熱に我に返った。  歯で唇を噛みちぎると、鉄の味がした。けれど俊也は痛そうな素振りもせずに今度は流星の服を強引に引っ張り脱がせていく。 『てめ! やめろっ』  服が腕に落ちてくると、そのまま上へ万歳する形で布団に縫い付けられた。中途半端に脱がされた服が、腕を拘束し自由を奪う。  抵抗しても逃れられない。その現実の呆然として、覆いかぶさってくる俊也を見た。  脱がされ乱れた流星を見て、息を飲む。その顔が知らない、貪欲な雄の顔をしていて身体が震えていた。
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