一、

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「……」 喫煙所の隅っこで、獲物なんて来もしないだろうに馬鹿馬鹿しい。 足を延ばして、その糸を絡めとる。 「流星さんってば」 「うっせ。聞こえてる」 「それで……流星さん、今日の夜は予定ありますか?」 「……ねえけど、いきなり初日に男を誘うつもりか?」  怯えたハムスターみたいな挙動不審な様子のくせに、一丁前にデートの約束をしようとしているとしたら、強かな人間なのかもしれない。 「ちがっちがいますっ スタイリスト材とかシャンプーとか、カットとか。出来たら夜も指導してほしいんです」  デートの誘いじゃないと言うのが少し不服だったが仕方ない。 「今日は用事あるんだが、明日からでいいか?」
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