401人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は力が入らない手をかざしてみた。解放された。やっと解放された。
その安心感から、今にも意識を手放そうとしていた。
『あんた、医者でしょ! 医者になるのに、どうしてこんなっ』
ヒステリックに叫ぶと、嫌悪感からさらに殴られ蹴られ、床に転がされていく。
抵抗せずに殴られている俊也が可哀想で、俺は意識をなんとか保たせ、声が絞り出す。
『いいよ。オカマ、いいから俊也を離してやれよ』
情けないぐらい掠れた声に、二人がハッと流星を振り返る。
涙を拭いた流星がふらふらと起きあがり、俊也を見下ろした。端正な顔立ちの俊也の顔が、パンパンに腫れあがり鼻血を出しているのを見て、可哀相にと頭を撫でてやった。
『痛いだろ。可哀そうに』
『っく。りゅ、せ、さん』
口の中も切れているのか、うまくしゃべれない様子の俊也を冷たい目で見下ろしていた。
少し動くと、足と足の間から、こぷっと出された液体が流れ落ちてきて、太ももを汚していく。
膨れ上がった眼の隙間から、その液体を見ると、俊也は苦しそうに嗚咽を上げだす。
『警察行っても、なあ……。お前のその顔見て、男がゴーカンされたぐらいでやりすぎだって、喧嘩両成敗だろうし』
最初のコメントを投稿しよう!