二、

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 俺は力が入らない手をかざしてみた。解放された。やっと解放された。  その安心感から、今にも意識を手放そうとしていた。 『あんた、医者でしょ! 医者になるのに、どうしてこんなっ』  ヒステリックに叫ぶと、嫌悪感からさらに殴られ蹴られ、床に転がされていく。  抵抗せずに殴られている俊也が可哀想で、俺は意識をなんとか保たせ、声が絞り出す。 『いいよ。オカマ、いいから俊也を離してやれよ』  情けないぐらい掠れた声に、二人がハッと流星を振り返る。  涙を拭いた流星がふらふらと起きあがり、俊也を見下ろした。端正な顔立ちの俊也の顔が、パンパンに腫れあがり鼻血を出しているのを見て、可哀相にと頭を撫でてやった。 『痛いだろ。可哀そうに』 『っく。りゅ、せ、さん』  口の中も切れているのか、うまくしゃべれない様子の俊也を冷たい目で見下ろしていた。 少し動くと、足と足の間から、こぷっと出された液体が流れ落ちてきて、太ももを汚していく。 膨れ上がった眼の隙間から、その液体を見ると、俊也は苦しそうに嗚咽を上げだす。 『警察行っても、なあ……。お前のその顔見て、男がゴーカンされたぐらいでやりすぎだって、喧嘩両成敗だろうし』
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