一、

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 朝方にこそこそ合鍵で入ってきて、流星の布団に侵入とした。 けれど、急に触れたり不意打ちで流星は驚くので怖がらせてはいけないと、躊躇したようだ。 自分で布団を出して横で包まっていた。  本当は玄関を開けた時点で気づいていたのだが、眠たさで瞼が開いてくれなかった。  眠っている間も触れてこないのは、良い傾向と言えばそうなのかもしれない。 「うん。誤飲した乳児が緊急輸送されてきてさ。俺、そんなの放っておけないし」  大きな欠伸をしつつもテレビを見て項垂れている。昨日遅くまで働いていたくせに、今日は大事なカンファレンスがあり外せずに出勤。休日が被ったことはないが、休みの日はただただ眠っているように思える。給料が良いのは頷けるが、自由がないその職業の何が魅力なのか未だに理解ができない。命を預かる仕事は責任感で潰されてしまいそうだ。 「まあ無理すんなよ。皿、シンクに浸けとけばいいから」 「え、流星もう行っちゃうの?」
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