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エプロンを椅子に放り投げていると、不満そうな声に苦笑する。
「今日から新人研修。朝の練習みてやらないと」
「……嫌だな。まだいつもなら一緒にいるのに」
子供みたいに甘える言い方だが、大人の色気を漂わせ、流星も簡単に胸をときめかせてしまった。よれよれのシャツから見える鎖骨に、甘く笑う笑顔、そして疲れて少し哀愁を漂わせている。そんな年下の男に簡単にときめかせていた。
甘ったれだが、このすこぶる顔の良い男に結局は甘えられると甘やかしてしまうのだ。
「馬鹿じゃねえの。たった数分だろうが」
俊也の横を通り抜けようとすると、腕を掴まれそのまま腰をぎゅっと抱きしめられた。
「……こら、俊也」
「研修生って、女?」
「知らねえよ。男の方が楽だけどな。俺、口調悪いし」
一瞬、俊也の動く手が見えたので、なんとか逃げずに済む。
あまり怯えるのも俊也が傷ついた顔をするので慣れようとは努力している。
「今日、シチューが食べたい」
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