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「シチュー? 話をコロコロ変えてんじゃねえよ」
頭を拳で、ぽこんと叩くとうっとり目を閉じて、顔を擦りつけてくる。
「うん。じゃがいもじゃなくて、大根と鶏肉のヘルシーな奴」
「面倒だから嫌だ。てか、離せ。遅刻すんだろ」
「玄関開けてさ、シチュー作ってる流星の後ろ姿、すごく抱きしめたくなって好きなんだ。お願いします」
これは、了承するまで離さないのだろう。深く嘆息すると、掴まれていた手を乱暴に払いのけた。
「分かった。時間あったらな。じゃあ行くから」
玄関の靴箱の上に置いたままだった鞄を腰に巻き、靴を履く。面倒くさいことに紐が解けていたので座って結んでいた。
すると、下を向いていた視界の中が急に薄暗くなる。そのまま肩を掴まれ、咄嗟の事で大きく身体を揺らしてしまった。
「ひぁっ」
「え、あ、ご、……ごめん」
玄関の扉まで後ずさった流星の怯え方に、肩を掴もうとした中腰のままで俊也が固まっている。呆然と目を見開いた後、気まずそうな顔で下を向く。
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