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私は興味を惹かれ、その全身像に近づいていった。見たところ、自分の身長よりほんの少し小さそうだ。私は白い布に手をかけて、思い切ってばっと引き下ろす。
目の前に現れたのは、薄汚れた石膏像だった。まず目に入ってきたのはもじゃもじゃ頭。そしてそのもじゃもじゃと繋がった邪魔そうな顎ひげ。太い二の腕に、見事に割れた腹筋。そしてその下に付いているのは……立派なアレだ。
私はついついそこを凝視してしまう。こんなにまじまじとそれを見るのは初めてだった。父親のものは幼い頃何度も見たことはあったが、年頃になってからこんな間近で目にするのは初めてで、目が離せなくなってしまう。
さすが石膏像になるだけはある。ソコも含めて、ヘラクレス像は見事な彫刻で、見る者(今回は私)を圧倒した。それほどまでに完成された肉体に見える。
私は唐突に、「触れてみたいな」と思った。ちょっとした興味だった。これまで彼氏なんていたことはなかったし、男性の、しかもこんなに見事な体躯を目の前にする機会なんてなかったから。
さくらが以前「昨日はヌードデッサンだったんだよ~! 男の人でさ! 丸見えだったの!」と興奮した様子で話していたことをふと思い出した。きっとその時のモデルより、このヘラクレス像のほうがいい身体をしてるはず。あれ。私の思考回路が変な方向に……。
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